(37)・・・うつ病・・・

この診断も、ICDやDSMのおかげで、無茶苦茶になった。鬱状態が、そのままうつ病診断になり、抗うつ剤処方になってしまうのが、今の精神医療の浅はかさだろうし、製薬会社の勝利である。

  1. 内因性うつ病;≒大うつ病≒本態性うつ病・・要するに、明確な原因も心因も無く、思考抑制や憂鬱感、悲哀感が続くもの。滅多に無い。抗うつ剤が必要なことが多い。
  2. 外因性うつ病;アルコール、インターフェロン、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、女性ホルモン、抗ヒスタミン薬、抗精神病薬、降圧剤、鎮痛剤、ガスター、チャンピックスなどによるもの。季節性うつ病や脳梗塞、更年期うつ病も、ここに分類される。抗うつ剤が要ることは少ない。
  3. 心因性うつ病;≒小うつ病≒神経症性うつ病≒抑うつ神経症≒気分変調症。
  4. 非定型うつ病;これは、発達障害の過活動後の虚脱期だと考えている。ここで絶対にやってはいけない処方は、抗うつ剤である。見かけることが増えた。

大雑把に分ければ、この4種類だろう。

  1. は、なかなか診なくなった。稀に出会うことがあるが、よくよく聞けば、②であることが多い。
  2. は、極めて多い。うつ病の過半数が、ここに当てはまる。
    今でも、気分転換に、晩酌を勧める医者もいるのだから、開いた口が塞がらない。
  3. これは、厳密に言えば、うつ病じゃない。抑うつ神経症という言葉が、近いように思う。原因を無くせば、解決する。しかし、夫婦の問題だとか、親子関係だとか、金銭問題とか、原因を除去できないものも多い。
    その時に。精神科医は、何が出来るのか?何をしてはいけないのか?
    このあたりが、大事な所だろう。薬を出すばかりじゃ、あまりに能が無い。
    抗うつ剤(衝動性亢進←アクセル過多)やベンゾ系抗不安剤(脱抑制←ブレーキ欠如)によって、ややこしくしていることが多い、今が苦しい…との訴えを無視できず、これらの薬剤を、処方してしまう。自分でも、苦渋に満ちた処方をしてしまうことがある。
  4. 非定型うつ病に、抗うつ剤を使えば、元々あった衝動性が亢進し、危ないことが起こる。

過去の失敗もあり、これを全部、漢方でやりたいのだが、腕が未熟で、うまく行かないこともある。精神薬を嫌がる人なら、根気良く付き合ってくれるから、どうにか乗り越えられる。しかし、今晩が苦しい、明日が苦しい…と言う人には、精神薬(抗うつ剤+ベンゾ)を処方せざるを得ない。

いずれにせよ、2)や3)が多く、1)は珍しい。
遷延したうつ病は、抗うつ剤の非適正使用(誤診or過剰処方orダラダラ長期処方)による医原病に違いない。自分の過ちから、確信を持つようになった。振り返れば、憂鬱になる。