(42)・・・精神薬の基礎知識・・・

敵を知り己を知らば、百戦危うからず。

A.抗精神病薬(*は持効性注射剤があるもの)
 1.定型精神病薬(旧薬)コントミン、レボトミン、セレネース*、フルメジン*
 2.非定型精神病薬
  1)SDA;リスパダール*、インヴェガ*、ロナセン、ルーラン、ラツーダ
  2)MARTA;ジプレキサ、セロクエル、ビプレッソ、シクレスト
  3)DSS;エビリファイ*、レキサルティ

レボトミンは眠剤代わり、フルメジンとロナセンは、幻聴対策で生き残っている。
セレネースは、副作用がひどく、セロクエル(その持効剤のビプレッソ)やルーランは、存在意味が無い。インヴェガ(リスパダールの持効剤)やジプレキサは、減薬が出来にくく、悪薬だと思う。レキサルティ、エビリファイは、発達障害の二次障害に有効な場合がある。シクレストとラツーダは、新薬過ぎて、未だ正体不明なり。持続性の注射剤は、ハロマンス、アナテンゾール、リスパダールコンスタ、ゼプリオン…すべてに危険で、死人が出ている。なるべく、使うべきではない。

B.抗うつ剤
 3.三環系;トフラニール、トリプタノール、アナフラニール
 4.四環系;ルジオミール、テトラミド
 5.SSRI  ;ルボックス、ジェイゾロフト、パキシル、パキシルCR、レクサプロ
 6.SNRI ;トレドミン、サインバルタ、イフェクサー
 7.NaSSa ;リフレックス(レメロン)
 8.その他;ドグマチール、デジレル(レスリン)、トリンテックス

トリプタノールは、夜尿や神経痛に、アナフラニールは、強迫用に生き残っている。
四環系は、消え去るのみ。SSRIでは、パキシルが、減薬が難しすぎて、悪薬。レクサプロが、抗うつ剤じゃなく、抗不安対策で生き残るはず。
SNRIは、減薬が難しく、衝動性を亢進させて、悪薬揃い。NaSSaは、眠剤代わりに生き残るかも知れないが、翌日が起きにくく、鬱の真っ最中以外は、推奨できない。
ドグマチールは、食欲減退の特効薬だが、ズルズル使うとジスキネジアが必発。デジレルは、ベンゾ系眠剤を減らすときに、極めて有効な眠剤だが、抗うつ作用は無いに等しい。トリンテックスは、未だ正体不明。

C.抗不安剤
 9.非ベンゾ系;セディール
 10.ベンゾ系;グランダキシン、リーゼ、レスミット、セルシン(ホリゾン)、ワイパックス、レキソタン、セパゾン、ソラナックス。メイラックス、デパス

セディールが有効ならいいのだが、残念ながら効果が弱く、吐き気が出やすくて、使い物にならない。ベンゾは、ご承知のように、すぐに効いて、誰でも頼ってしまう最強薬だから、最凶なのだ。依存が強く、抜け出すのが大変になる。一方、ずっと飲んでいると、効きが悪くなる。世界中で、日本だけが、ベンゾ天国。

D.睡眠剤
 11.ベンゾ系;ハルシオン/レンドルミン、リスミー、エバミール/ユーロジン、ベンザリン、サイレース/ドラール、ダルメート。ソメリン
 12.ベンゾ亜系;アモバン、ルネスタ、マイスリー
 13.非ベンゾ系;ベルソムラ、デエビゴ
 14.メラトニン受容体作動薬;ロゼレム

入眠剤(ハルシオン、マイスリー、アモバン、その親戚のルネスタ)は、どうしても抜け出しにくい。特に、前2薬は、悪薬だろう。 逆に、長時間型の、サイレース、ドラール、ダルメート、ソメリンは、精神病院薬である。残りの、中時間型が生き残るだろうが、睡眠薬は使いたくない。残念ながら、ロゼレムは、存在意味が無い。

E.気分調整剤
 15.リーマス;気分の上下を抑える。
 16.デパケン;同様だが、やや抑えが強い。
 17.テグレトール…強く抑える。
 18.ラミクタール…やや持ち上げる。

リーマスは、イライラや甲状腺の副作用に要注意。デパケンとテグレトールは、認知機能低下や肥満。ラミクタールは、薬疹が出やすく、敷居が高い。。

今は、こういう向精神薬を使う時は、負けだと思っている。一人一人に、時間をかけて、ゆっくり付き合わせてくれたら、ほとんど使わない自信があるが、今の診療スタイルの限界内では、どうしても使ってしまう。自分の現実処方は、漢方8割、向精神薬2割くらいかな。
よく使うもの。Aでは、リスパダール。微調整しやすいし、抜きやすい。Bでは、レクサプロ。抗うつ剤というより、抗不安剤として使う。副作用が少なく、離脱症状が軽い。Cは、ほとんどワイパックス一本。他のベンゾに比べ、唯一代謝物質が無く、飲んでから出るまでワイパックス。比較的だが、蓄積作用による後遺症が少なく、抜くのもやりやすい。Dでは、ルネスタ。アモバンの苦みを抑えた兄弟薬が、ルネスタ。やはり、抜きやすいから。Eでは、デパケンR。
どれも同じだが、使い続けないことを肝に銘じている。少なくとも、チャンスがあれば、減薬し、いつでも0を狙えるように準備しておく。生涯服薬…これだけは避けたいが、再燃を繰り返すケースだと、現実は甘くない。

(出典:イラストAC
(出典:場末P科病院の精神科医のblog様)