(189)・・・毒舌相談室(10)<再会>・・・
「先生、20年ぶりじゃね。生きとったんじゃね。ブログ見て知ったんよ」
「おいおい、わしを見つけるなや。もう年寄りじゃけん、静かに診療しょう思てな」
「何言いよるん。もう、あそこのクリニックには行かんけん、何とかしてや」
「ほうかな、何かまたあったんじゃな。実は、あそこからだいぶ来たけん、結局、皆診よるんよ。ほじゃけど、わし、あの頃は藪医者が酷かったけん、皆、精神薬漬けにしてしもて、申し訳ないと思うとるんよ。ほじゃけん、今は皆、薬を抜いて漢方に置き換えて、断薬を目指しとるんぞな」
「かまん、かまん、大歓迎よ。先生も製薬会社にやられとったんじゃな」
「お恥ずかしいわい。抗うつ剤じゃのベンゾじゃの、腕さえあったら何も使わんでええんじゃ。わし、まだまだ成長途上ぞな」
「爺じいじゃないがな、元気そうじゃがね」
「口だけじゃけどな。皆を薬漬けにしたけん、罪滅ぼしに減薬、断薬をせにゃ、死んでも死に切らんけんのう」
「先生、わしを覚えとりますか?10代の頃、助けてもろたがな」
「おうおう、40年も前じゃのう。元気じゃったんかな?」
「おかげで、学校は高卒認定受けて、大学にも行けたし、結婚して子供ももう、孫が出来ることになりましてな」
「よう、頑張ったのう。大したもんじゃわい。ほて、今日は何用ぞな?」
「あの頃に、一緒に世話になった友達が、あれからずっと薬を飲み続けて、もうおかしなっとるんですわい。今は、統合失調症になっとるらしいですわい」
「ほなもん、統合失調症じゃあるかいな。ほじゃけど、わし、子どもにはさすがに薬は出さんかったはずじゃがのう」
「ええ、もちろんです。先生が倒れてから、近くの精神病院に行ったけん、精神薬飲み始めましてな。だんだん、おかしうなって、作業所にも行けず、寝てばっかしなんじゃ」
「よいよいじゃが。精神薬飲み続けたら、誰でもおかしうなるわい。今頃はのう、内科でも薬出したら出しっぱなし。やめることなんか考えとらんけん、副作用ばっかしじゃわい」
「ほうでしょ?わしも、薬やめさそう思て、色々言うんじゃが、訪問看護がキッチリ来よるけん、薬を抜けんのですわ」
「今頃、ひとりの患者に、診療費、薬代、訪問看護やデイケアなど、寄ってたかって金にしよる。誰も頼みもせんのに、すぐに訪問看護が付いて来るんぞな。あいつら糞バエみたいじゃ」
「訪問看護が付いとるけん、安心しとりましたがな」
「あいつら、自分の考えなんか無いけん、主治医の言う通りじゃ。主治医が、大体誤診しとるけん、土台から間違えとるわい。精神病院自体が、訪問看護しよるけん、皆がグルじゃぁ」
「あそこで、年金も書いてもろて、全部世話になっとるけん、抜け出せんでしょうかね?」
「かまん、かまん。全部わしがぶち切っちゃるわい。これから、自由の身になるけん、心配すな」
「あのうお久しぶりです。母が30年前にお世話になって、覚えてますでしょうか?」
「往診に行きよったけん、ようお茶飲んで、タルト食わしてもろたがな」
「あゝ良かった。覚えてくれとって良かった。あの母が、もう78になりましてな。あの時以来の鬱になりよったんです。また、どうにか成りますまいか?」
「もう、足が弱うて、往診はしとらんのよ。いっぺんだけ、車いすででも来れまいか?」
「ええ、ええ、明日にでも連れて来ますがな」
「それにしても、この処方は、どこぞな?ひどいもんじゃが」
「もう、30年近く、日赤に通うとるんです。まじめに薬は飲んどるんですがなぁ」
「いかん、いかん。医者の言う通り飲んだらいかんぞな。こんなもん、飲みよるけん、元気が無うなったんじゃがな」
「ほんなもんですかのう?」
「降圧剤、コレステロール低下剤、ガスター、パーキンソンの薬、痛み止め2種類。これで、よう飯が食えるなぁ」
「いやいや、最近は少しずつ痩せて来まして、7㎏ほど細なったんですわ」
「そういう薬じゃがな。ほて、デパス飲んで寝るんかいな?」
「夜中にボケた行動が出て、困っとります。主治医に言うたら、アルツハイマーじゃ言うて、アリセプトも出ました」
「いかんいかん、そんな馬鹿な診断あるかいな。これ飲んだら、荒れるしかないわい」
「ほうです。怒りっぽうていかんのです」
「これ皆、薬剤性じゃけん、抜いたらようなるけん、心配要らんぞな。気の利いた薬剤師なら、止めるがなぁ。医者には、よう言わんのじゃけん、困ったもんよ。指示通り飲んでください・・しか言わんのよな」
「はい、わたしらも真面目に飲むようにしか言わんかったです・・」
「コレステロールを140まで下げて、血圧も120以下にして、これで元気出るかいな。今頃の内科医も、しょ~もない奴ばっかしじゃ。わしの血圧が上がってしょうがないわい!」