(11)・・・心療内科・・・

本当なら、精神科病院と精神科診療所(クリニック)の2つしかないはずである。では、心療内科とは何ぞや?

  1. 精神科が、街に出て行くようになった頃(昭和50年代)、神経科クリニックという名前が、よく使われていた。しかし、神経内科や脳神経科が登場すると、神経科では紛らわしくなった。
  2. では、精神科クリニックと名乗ればいいが、そうすると、地域から苦情が来て開業に支障が出たり、患者側も、出入りしにくくなる。なので、精神科クリニックという名称は、あまり使われなかった。
  3. 心療内科も精神科病院も、精神科医がやるのだから、入院病棟があるか無いかの違いしかないはずである。昔の味酒心療内科は、はじめは味酒内科神経科という看板を出し、入院施設もある精神科有床診療所だった。クリニックでも精神病院でもない珍種だったのである。
  4. 精神病は、精神科病院。うつ病や神経症は、心療内科。そういう巷のイメージを使って、精神病圏の人はなるべく診ない、という方針のクリニックが増えて来た。生活保護は診ないとか、アルコールや覚せい剤関連は診ないとか。会社員、OL専門を目指していて、今流行りのリワークプログラムを活用しているクリニックもある。また、カウンセラー(心理士や精神科ソーシャルワーカー)が居て、保険外の自費診療で、カウンセリングと称することをやっていたり。(薬漬けで、リワーク?薬漬けでカウンセリング??)
  5. 最近のクリニックは、予約を絞って、患者数が増えないようにしている所もある。一人一人をきちんと診る為に、数を増やさない…?いや、一定の数を診ていれば、十分に食えるから、それ以上は働かないのである。そういう所は、障害年金の申請すら、やろうとはしない。
  6. 21世紀になって、精神科病院の経験が無い医者が、心療内科を開業する時代になった。それでも一向に構わないが、今頃は、内科医が心療内科の看板を出す時代だから、厄介である。じゃあ精神科の専門医が、きちんとした診断や処方をやっているかと言えば、それが危ういのだから、むしろ素人の方が、慎重な医療をやっていて、害が少ない場合もある。精神病院から出た医者は、患者を薬漬けにしても平気である。しかし、それじゃ世間が許してくれない。そうして、ようやく町医者になって行く。これは、誰の事でもない、自分の事ですよ。
  7. よそのことを言っていて、しいのきはどうなんだ?うちは、院長がそもそもお人好しで、困っている人が居たら、放っておけない。予約が入ったら、なるべくその日か翌日には診るようになっている。だから、いつも忙しく、外来患者で疲れ果て、書類の処理で疲れ果て、医者2人とも過労気味の毎日である。院長はともかく、僕は、結果的に3分診療になり、駆け足のように診療時間が過ぎて行く。とてもじゃないが、カウンセリングには程遠く、自慢できるものは無い。取柄でも欠点でもあるが、誰でも診る。何でもできることは全部やる。とほほ( ;∀;)
  8. 今や、心療内科すら古くなった、こころのクリニックやメンタルクリニック、ハートクリニックなど、どんどんイメージは変わっている。いいか悪いかが問題だが、往診専用クリニックさえ登場している。精神病院でも、不登校や発達障害を診たりするし、心療内科でも、精神病圏が中心の所もあるので、本来、両者の守備範囲は同じと言ってもいい。
  9. もしやり直せるなら、どれがいい?誰も雇ってはくれないが、自分では、精神病院に戻りたい。堀江病院で、束の間に見た夢を、もう一度追いかけてみたいものである。老人の妄想癖かな?
しいのき心療内科