(179)・・・ブラクジラ『世界一小さな火山』・・・

 小学校の修学旅行は、関西汽船に乗って、お決まりの別府温泉。高崎山の猿と遊んで、血の池地獄や坊主地獄をめぐるのだが、もうはせだにされとったけん、良い思い出は無い。

 中学では、山口に行った。吉田松陰の松下村塾(門下に高杉晋作、桂小五郎、伊藤博文など)にも行ったが、印象は薄い。湯本や湯田温泉も、珍しくもない田舎の温泉郷だった。

秋吉台あきよしだいは、四国カルストどころじゃない広大なカルスト地形である。カルストとは、石灰岩の地形で、CaCO3(炭酸カルシウム)だから、水に溶けて、炭酸ガスになってしまう。石灰岩は、昔々の生物の死骸(化石も含む)から成り立っている。

水に溶けやすいから、洞窟などが容易にできやすく、秋芳洞しゅうほうどうは、何kmにも渡る大鍾乳洞である。夏でも涼しかったことしか覚えていない。

学校側(切支丹)は、山口市のザビエル記念聖堂を見せたかったのだろうが、その手は桑名の焼き蛤よ。完全に無視してやったわい。

最も印象に残っているのは、世界で一番小さい火山…笠山かさやま(萩市)だった。笠山を含む山口県北部一帯の「阿武火山群」は、気象庁が定める111の活火山に含まれている。笠山という名前も気にいったし、火山地形がそのまま残り、噴火口跡まで残っている。山頂に直径30メートル、深さ30メートルの小さな火口がある。この火口には遊歩道が通じており、火口内に自由に下りることができる。壁のようにそびえる赤褐色の溶岩を間近で観察できるのだ。

ついでに、明神池という汽水湖(海水+淡水)があって、マグマの冷えた地層だから、風穴ふうけつが無数にあり、そこに海水が流れ込んで湖水と混じり、独特の生態系を作っている。何しろ、一見普通の池に、フグやボラが飛び跳ねているのだ。

たった112mの小山だが、活火山であり、1万年前の溶岩流の跡も、そのまま残っている。
日本海側に目をやれば、「萩六島」と呼ばれる小島がぽつん、ぽつんと浮かんでいる絶景がある。これらの島々は全て火山島で、「阿武あぶ火山群」の一部である。

そばには、ヤブツバキの自生林があって、連理の椿が有名である。つまり、根元は別の樹で、途中から一本の樹として合体している。「そんな夫婦なんかおらんぞな」と言ったら、担任の若い教師がムキになって、「居るんだよ!」と言い返したのを覚えている。新婚ホヤホヤの20代生物教師だった。

※比翼連理:「比翼」は比翼の鳥のことで、雌雄それぞれ目と翼が一つずつで、常に一体となって飛ぶという想像上の鳥。「連理」は連理の枝のことで、根元は別々の二本の木で幹や枝が途中でくっついて、木目が連なったもの。男女の離れがたく仲むつまじいことのたとえ。
※阿武町:小さな町が最近有名になった。4630万円誤送金事件である。

(出典:フォトAC