(31)・・・紹介状・・・

 突然に、「転医したいので、○○クリニックに紹介状を書いてください」という事は、時々ある事ではある。理由は、聞かずとも普通思い当たるものだが、分からないことも稀にある。
不安神経症の女性で、前医では、レキサルティ、レクサプロ、ソラナックス、アキネトン、マイスリーなど、ポイントも外れ、過剰な処方だった。徐々に漢方に置き換え、抑肝散加陳皮半夏と桂枝加竜骨牡蠣湯を朝昼夕服用し、ルネスタ(2)を眠前。ここまで進んでいて、コミュニケーションも良かったのに、不思議なこともあるものだ。

どうせ、無愛想、ぶっきらぼう、きつい言い方…何かが癇に障ったのだろう。決して、愛想が良くないのは確かである。もう、体の痛みが限界で、それを堪えるのに精一杯になって、余裕が無い‥と言えば、弁解がましいか…。

何らかの転医希望は、いくつかのタイプがあるが、多い順に書いてみよう。

1.「わしは、酒は飲むぞな」「飲んだらええがな。その代り、鬱はよう治さんぞな」「うつ病じゃけん、治ろがな」「うつ病じゃの上品な病気じゃないわい。アルコール性の鬱じゃと言うとろが」「もうええ、よそに行くけん、紹介状書いてや」「勝手にせい!」
2.上のパターンで、酒の代わりに、「ハルシオンとデパスを出してや」「いや、わしは出さん薬は、絶対に出さんぞな」「もうええわい。よそで貰うけん」
3.「漢方はよう飲まんけん、抗不安剤を呉れまいか」「いや、20歳そこそこの女性が、いつ妊娠するか分からんけん、こんなもの飲むべきじゃないわい」「結婚も妊娠も、予定が無いけん、よそで貰うわ」…数年以内に、妊娠して、「どうしたらええじゃろか?」と言って来る事、しばしばなり。
4.「うちの子、一向に、学校に行こうとせん。もっと効く薬を出してや」「いや、薬を飲む病気じゃないけん」「先生から、きつうに言うてや」「登校刺激ばかりしよったら、ますます引きこもるぞな。本人は、行きたいけど行けんのが苦しいんじゃけん、分かってあげることが先ぞよ」「やっぱり、うつ病の薬を出してもらえるとこに行くけん」

それ以外は、原因不明。相手も気を遣って、はっきり言わず、そっと来院しなくなることが多い。最も思い当たるのが、3分診療であり、それに対しては、弁解の余地は無い。数が増えれば、一人当たりの時間が少なくなる。それを補充する目的で、全員に携帯番号を渡し、ショートメールを貰うようにして、場合により、電話で対応させて頂いている。(やはり、弁解しとるがな…)
性格が合わないとか、言い方がきついとか、目が怖いとか、政治のポスター(アベ政治を許さない)が怖いとか言われると、もうお手上げである。スミマセン、よそへ行ってくださ~い。
通院が深まれば深まるほど、僕のようなヘッポコ医者の考え方が、透けて見えるのだろう。それゆえ、笠ファンとアンチ笠が、はっきりしやすい。合う人も合わない人も、僕の中にニヒリズムを見つけている。「だから、いい」「だから、いや」・・あぁどうしようもない・・。

僕にも、音楽性幻聴がある。時々変わるのだが、多くは、「人間なんて」♪。

♪そらにうかぶ雲は
 いつかどこかへとんでゆく
 そこになにかがあるんだろうか
 それは誰にもわからない

 人間なんて ラララ ラララ ララ
 人間なんて ラララ ラララ ララ♪

(出典:人間なんて – よしだたくろう)