(158)・・・のふぞ・・・

松山弁(まっちゃまべん)にも、時代により地域により、少しずつ違いがある。

有名なのは、よもだであり、このブログ(111)でも書いた。

 昔、河島英五の唄で、「野風増のふぞう」(S59)というのが流行った。B面が、「酒と泪と男と女」である。これは、岡山方言で、やんちゃ・生意気などという意味らしい。

 愛媛では、「のふぞう」は、大胆な、横着な、ずぶといなどの意味になる。それが、松山では、「のふぞ」になって、「のふぞにせられん」は、粗末にしたらいかんぞな…という意味である。こういう風に、少しずつニュアンスが違う。

 同じ松山でも、我が和気町あたりでは、「こいつ、のふぞな奴じゃにや」等と言い、だらしない奴とか、まともじゃないというニュアンスになる。服装がのふぞだったら、「びんだれ」である。精神がのふぞだったら、「よもだ」になる。

 「おまえは、のふぞじゃにや」と言われ続けて育ったから、むしろ余計にのふぞになった。常識に反発し、規則を守らない子どもが、遂に75歳近くになって、骨の髄までのふぞである。理屈や知識以前に、反骨、へそまがり、反権力は生まれながらの気質かもしれない。

 「ご飯を食べる時は、べちゃべちゃ喋らずに、よそ見せずに、黙って食べなさい」と、うるさく躾けられた。だから、食事中は、カルテを書き、メールの返事をし、電話でしゃべりながら食べている。「親の言う事は、聞くな」が、マイルールである。

 僕ののふぞは、「清潔嫌い」に現れている。風呂には、めったに入らない(シャワーは毎日ぞな)。1年に2~3回の年も多かったが、今でもあまり変わらない。膠原病には、入浴がいいのだが、分かっていても出来ない。風呂に入ると風邪を引く。おそらく、皮脂や汚れが1枚脱皮するから、寒いのだろう。

 コロナで、NHKが「手洗い、うがい、マスク」としつこく言うから…。と言うより、昔から、顔を洗う習慣が無く、手も洗ったことがない。繊細で優しい性格だから、面の皮を少しでも厚くするために、顔を洗わない(というのは、ウソ)。

 但し、爪だけは綺麗である。爪噛みが治らないからだが、「バイ菌だらけの爪を噛まれん」とうるさく叱られた。そうすると、余計に爪が気になって、治らなくなった。ガミガミ言うだけが、「しつけ」じゃないんぞな。

こういう不潔人間だから、人が近づくと、かなり臭いはずだが、人嫌いだからちょうど良い。マスクなどしたくないが、院長命令で、診察中は付けている。そのマスクも、1週間に1枚だから、耳にかかる紐は真っ黒である。新品の服や下着も苦手で、マスクも新しいのは嫌いなのだ。おかげで、マスクは月に5枚もあれば十分である。

 部屋は、聴覚過敏&寒がりの為、目張りをしているから、戸が開かない。つまり、換気など一度もしたことがない。ベランダも窓も、僕には不要なのだ。整理整頓は大好きだが、掃除は苦手である。雑然としたゴチャゴチャ部屋になるよう、わざと自分流に散らかして整頓している。

 いつもマイルールに縛られていて、同一性保持行動から自由になれない。毎日、起床は4時。朝食を食べて、5時にクリニックに着く。時間には極めて神経質で、毎日同じように暮らさないといけない。

 中学、高校時代には、昼休みに学校を抜け出すことが、マイルールだった。外の空気を吸わないと、頭がおかしくなりそうだった。抜け出しては、堀之内(昔は堀端と言った)の亀を見たり、三越の屋上に遊びに行った。

そうすると、昼飯を済ませておかないと、食べ損ねてしまう。つまり、昼前の授業中に、必ず、早弁をした。書見台に本を立て、その陰で食うのだが、一度や二度は見つかったこともある。教師は意地悪そうに、わざと、「おい、りゅう!次のページを読みなさい」と当てて来るのだ。口の中いっぱいに労研饅頭を頬張っているので、読める訳が無い。のどに詰めて、ひ~ひ~言ったこともあった。

 学校中が狂っていたので、昼飯時間は食べながら勉強をする奴も多かった。なにしろ、廊下を歩くときも、必ず参考書を読みながらなので、柱や壁にぶつかって怪我をする奴が、常に何人か居た。おでこの傷に、包帯や絆創膏を付けているのが、優等生の勲章だったのである。

 話は逸れたが、早弁は今でも習慣になっている。時間がもったいないので、昼休憩は取らず、新患予約の時間にしている。なので、午前中の診療時間内に、食べなければいけない。一人出れば、次の一人が入って来るから、理屈上は食べる時間は無いはずである。その5秒、10秒を削り出して、今でも労研饅頭を食べている。マスクのおかげで、口の中に残っていても、しゃべりながら飲み込んでいる。もちろん、手など洗う暇はない。我ながら、のふぞじゃわい。

 もう生きることにものふぞだから、コロナでコロリ…も十分にあり得るだろう。そうじゃなくても、腹部大動脈解離を抱えていて、いつ破裂するか分からない。診療を午前中に済ませるようにして、80歳まで生きてみよう…と思っているが、こうまで「のふぞ」では、誰にも信用されない。かまん、かまん、もうええんじゃがな~。

(出典:イラストAC