(131)・・・依存症・・・

 依存症と中毒は、本来は別のものだった。中毒は、毒にあたると読んで字の如しであるが、今は混同され、同じ意味で使われている。嗜癖(アディクション)は、乱用→依存の両方を指している。

 自分の場合、父親の、アルコール中毒を憎んで育ったから、酒は飲まないしタバコも吸わない。だから、自分は中毒体質ではない…と思っていたが、よ~く振り返れば、若い時は、パチンコ中毒や万引き依存。のちに、くじら中毒。そして、仕事中毒のような時代もあったから、やはり中毒体質かも知れない。

 依存症には様々なものがあり、誰もが思い当たるのではないだろうか?どれにも当たらない人の方が少ないだろう。

  1. アルコール依存、ニコチン依存、カフェイン依存、ベンゾジアゼピン依存、精神薬依存、麻薬&覚醒剤&シンナー依存
  2. 摂食障害(過食症)、砂糖依存症 
  3. リスカ依存
  4. 抜毛症
  5. 借金依存症
  6. 潔癖症、完璧主義
  7. ギャンブル依存症 – パチンコ依存
  8. 買い物依存症
  9. ネット中毒、スマホ依存、ゲーム依存
  10. 仕事中毒
  11. 共依存
  12. 性依存症
  13. 宗教依存(カルト依存症)
  14. ドメスティックバイオレンス
  15. 研究中毒?

 厳密に言えば、ほとんどが精神科領域になるが、中毒にも、時代の変遷がある。医者になった頃には、覚せい剤中毒(ポン中)が多く、ボンド(シンナー)も若い者に多かった。いつの時代にも、アルコール中毒(アル中)が多いのだが、昔は、市内のあちこちで大暴れして、「留置所でも手に負えんけん、往診しとくれや」と、何度も呼ばれた。松山でも有名だった連中が、皆死んでしまったから、今は、有名中毒者はいない。

 女性に多いのは、ダイエット依存→過食嘔吐→摂食障害であり、これも依存症には違いない。双璧をなすのは、リスカであるが、これも市内の有名人は激減した。アムカ(腕)、ボデカ(体)、アシカ(足)など、リスト(手首)に収まらず、体中網目のタイツでも履いたように、全身切り捲っていた女性も、だいぶん見かけなくなった。

 これらの何人かは、精神病院に入れられ、「パーソナリティ障害」の診断の元、抗精神病薬に漬けられ、衝動死(自死)して、今は居ない。

 どの依存症も、心療内科では難しくて難しくて、容易なものは無い。大分減ったが、パチンコ依存、借金依存などの相談も多い。事実上、治療法が無いのだから、お手上げである。

理屈を言えば、強迫性+衝動性を抑えればいい。だから、抑肝散加陳皮半夏を常用しているが、なかなか思うようにならない。

 最近の外来で、圧倒的に多いのが、スマホ依存(ゲーム依存、ネット依存)である。もう世の中全部、一億総スマホ依存であるかのようで、6歳から80歳まで、多くのスマホ依存症に出会ったのだが、これまたお手上げ状態である。これについては、改めて書いてみたい。

 最近の高校生に、ひそかに流行っているのが、ブロンとかパブロンなどの風邪薬中毒である。特に、咳止めの効用を謳っているものには、覚醒剤の原料であるエフェドリンや麻薬の成分であるリン酸ジヒドロコデイン、興奮作用をもつカフェインなどが含まれている。これらを、OD(オーバードーズ;過量服薬)して、トリップするのが、高校生の現実逃避に使われている。

 高校生も、未来が見えずさまよっている。大人が、未来を提示できない時代だから、「何のために生きとるんか、分からんようになった」という、子どもの嘆きが増えている。苦しさを紛らわせようと、スマホや薬に逃げるのだから、それ自体を責めることは出来ない。

人間なんぞ弱くて、哀れで滑稽である。ダメ人間が居ないように、大した人間も見たことがない。みんな、チョボチョボぞな。

(出典:イラストAC