(88)・・・切歯扼腕(せっしやくわん)・・・

転医希望があると、紹介状を書く。「転居に伴い」「漢方が飲めないので」「診察時間が短いから不満があり」「いつも、怒られそうで怖いらしく」…そんな理由が多いが、やはり、入院依頼の紹介状が最も難儀である。わざわざ、精神病院を選ばざるを得ない結果には、忸怩じくじたる思いで、こちらもつらい。

逆に、紹介状を持っての来院も多く、その場合、敢えて、昔ながらの慣習を破ったご返事を書いている。普通なら、「いついつ来院されました。同処方にて、経過観察したいと思っています。ご紹介ありがとうございました」…が当たり障りのない返事である。

自分流では、「うつ病じゃなく、単なるストレス神経症であり、抗うつ剤やベンゾを全て抜いて、漢方のみにしながら、会社の上司との交渉を始めたいと思っています」とか、「統合失調症は誤診であり、発達障害の二次障害の上に、過剰な処方が重なって、薬剤性精神病に至ったものでしょう。差し当たり、単剤少量処方を進めて行きます」…など、相手の気に障るに違いない返事を出すことにしている。

こんな方法は、敵を作るばかりだが、もともと四面楚歌だから、今更困りはしない。昔は、ホームページや本を出してまで、精神医療の悪弊と斗って来たつもりだが、今は、ブログしか手段が無い。誰もが、「あのじじいめ、早よ死ねや」と思っているだろうが、憎まれっ子、世にはばかってやろうわい。

減薬を求めての来院は、「よっしゃ!」と引き受けるが、中身を見たら愕然とする。眠剤では、ハルシオン。抗不安剤では、デパス。抗うつ剤では、パキシル。これらがドッサリ入っていたら、どこから手を付けていいものやら…。どれも抜きにくく、離脱症状が必発である。(素人の内科医ならともかく、専門家がこんな処方をやってどうするんじゃ?)

優しい心療内科医は、「眠れんがな…」と言うと、必ず何かを足してくれるらしい。遂には、抗精神病薬(セロクエルやレボトミン)を足して、イソミタールとブロバリンまで足して、自分の足で歩けず、抱えられながらやって来る人もいる。(精神病院ならいざ知らず、21世紀のクリニックに於いて、イソミタール、ブロバリンが亡霊のように生きているとは、予想もせんかったなぁ…)

カルテ上では、第一病名が不安障害であっても、使う薬によって、うつ病を第二病名にして、その上に、第三病名には、統合失調症を加えざるを得なくなる(例えば、セロクエル処方)。もう、原理原則など無茶苦茶である。

メイラックスとソラナックスを朝夕に、レンドルミンを眠剤で、頓服にレキソタンを飲んでいる人にも会った。「朝から晩まで、ベンゾジアゼピン漬けじゃがな」「もう効いてないんよ。別のを足しておくれんかな」「こらえてや~」

抗うつ剤とストラテラを飲んで、毎日を頑張っている人。自分は、双極性障害Ⅱ型だと言う。「そんな病気は、ありゃせんぞな。ただの医原病じゃけん」「いや、それでデパケンを飲んどるけん、何とかなっとりますんよ」「上げる薬を飲んで、抑える薬を飲むんなら、なんも飲まんほうがよかろがな?」

この人はまだましな方で、抗うつ剤の昂揚が出たら、リスパダールまで飲まされる。(そんな人、なんぼでも居る…)。抗うつ剤で衝動性が出て、リスカでもやったら、診断名が、「パーソナリティ障害」に変わる。そこで出されるのが、ジプレキサ。(あ~あ、何やっとるんじゃ!抗うつ剤を抜くのが、最優先じゃろ?)

発達障害ベースの人が、過活動と燃え尽きを繰り返せば、双極性障害Ⅱ型だと言う。そんな疾患、あるかいな。パーソナリティ障害などという疾患も、この世に存在しない。存在するのは、精神科医の頭の中だけである。(何も)専門学会がボロいのは、こういうインチキに全く異論が無いこと。(まともな医者は、どこ行ったんぞ~?)

「妊娠したけん、薬を抜いてくれまいか?」→「ほげなこと言うても、一気には出来んぞな」
「結婚予定が近いので、抜いてくれんじゃろか?」→「離脱症状がきついけん、そう簡単じゃないんぞな」
こんなケースでは、デパスを飲んでいる場合が多い。最初の処方が内科医とか、整形外科医だったりする。遂には、デパス(0.5㎎)を一日12錠…6㎎飲んでいる人にまで出会った。(ここまで来ると「犯罪」じゃあ…)

パニック発作を起こしやすく、クリニックに行ったら、PZC(抗精神病薬!)を出され、ずっと飲み続けていた人が居る。「これ、精神病の薬ですけど、御存知なん?」「ほ~知らなんだわい」
こんなケースで、ジプレキサを飲まされていた人も診た。パニック障害に、ベンゾならまだ分かるが、なんで抗精神病薬を??(医者の頭が、おかしうなっとるがな、もう~…)

高齢者施設からの相談。
「夜中にナースコールを20回も押されて、夜勤者がふらふらになっとるんです」
「なんでも怒りまくって、ご飯をヘルパーに投げつけるんです」
こんな相談は相変わらず多い。ベンゾを飲んでいる(主にデパスかソラナックス)か、アリセプトやメマリーなど認知症薬を飲んでいる。なんぼ経っても、こういう馬鹿処方が、減る様子は無い。(認知症専門外来も増えたけど、何しとるんや(怒)?!)

これまた多いのが、「うつ病が治らない」と言う相談。聞けば、毎晩5合の酒を飲んでいる。
「これのおかげで、眠剤は要らんのです」「何を呑気なこと言うとんぞな。アルコール性うつ病じゃがな。断酒したら、すぐ良うなるわい」「アルコール中毒じゃないけん、昼間は飲まんのです」「中毒じゃなかったら、断酒しましょうや」「…」「いつでもやめれるんでしょ?」「…」「だめだこりゃ」

うつ病治療と言って、ジェイゾロフトを200㎎も飲み、リストカットをやるは、首を吊るやら。主治医に聞いたらしい。「私は、うつ病じゃなく、発達障害ではないですか?」「いや、僕は、発達障害の診断はやらないので」(そんなポリシー?ありか?)

「会社のパワハラで苦しくなり、うつ病の治療をしとりますが、ようならんのです」「そりゃ、憂鬱には違いないが、憂鬱とうつ病は違うぞな」「抗うつ剤は、きちんと飲んどりますがな」「違う、違う、薬で憂鬱が取れる訳じゃ無いぞな」
(なんでもかんでも、抗うつ剤処方…ええ加減やめてくれ~)

最近では、WAIS検査を受けて、アスペルガー症候群の診断が出ているのに、ほぼ無症状で、インヴェガ12㎎、エビリファイ6㎎、ジェイゾロフト50㎎を飲まされて8年、という人にも会った。ここまで来ると、精神科医による「パワハラ」とか「虐待」と言ってもいい。薬で、自閉の特性が取れると思ったのだろうか?

ペインクリニックや整形外科では、ロキソニンどころか、サインバルタやリリカ処方が「標準」らしい。(サインバルタの)動悸や不安が出て、心療内科に行って、また薬漬けになる。フラフラする(←リリカ)ので、耳鼻科に行って、そこから心療内科に廻される。(なんぼ教科書に書いとっても、目の前で副作用が出とんが分からんのか?大学教授という名の素人が書いた教科書を、なんでまるまる信じるんや?)

もう、誤診誤処方だらけで、歯痒くて歯痒くて、たまらん。昔、自分も似たような事しとったから、あれこれ言う資格は無いかも知れん。あ~あ、屁も溜め息も、何も出んがな。

(出典:イラストAC