(110)・・・新日本語の時代・・・
診察室では、子どもたちが、聞きなれない言葉を発するので、「それ、なんのことぞな?」と聞き返してばかりである。その一部を紹介しよう。
○親ガチャ…子どもの立場から、「どんな家に生まれるか、運任せじゃけん」「運が悪いけん、もうどうにもならんのよ」ガチャというのは、ソーシャルゲームでのキャラクター入手方法らしい。日本社会は、全く不平等社会である。生活保護の家庭に生まれた場合、大学に行ける率が、30%くらい。大学を出て就職しても、その後10年くらいは、奨学金を返し続けなければならないから、貧困からの脱出は容易じゃない。
○ぴえん…「友達と仲直り出来たけん、ぴえんこえてぱおんです」「は~ぁ?」ぴえん、ぱおん、どちらも、涙がちょちょぎれることらしい。でも、よく聞くと、こういう友達関係は、SNSでのことばかりである。
○メンヘラ…メンタルヘルスから来た言葉で、「私の友達は、メンヘラばっかしじゃけん、頼りにならんのです」「私は、小学校の頃から、ずっとメンヘラじゃけん」などと、否定的な使い方をするから、たまに差別的にもなる。しかし、最近の10代は、「僕は、病気じゃないがな。ただのメンヘラやっとるだけ。仕事しだしたら、メンヘラは卒業するけんな」などと言う。
○ラノベ…「君の趣味はなんぞな?」「僕は、ラノベが好きです」「は~ぁ?」ライトノベルの分野は、ファンタジー小説かと思っていたが、どうやら、推理小説とかSFなども含まれるらしい。絵を描く者、音楽や声優に憧れる者、ゲームや動画にはまる者、そして、ラノベである。
○ヤングケアラー…高校生どころか、小学生や中学生まで、親の介護をする者が増えている。親が、外出を避けて引きこもる場合、子どもたちが、けなげに買い物に行く。玄関に誰かが来ても、子どもたちが対応する。親子のコミュニケーションがいい場合は、大丈夫だが、心が通い合っていないと、子どもが「親ガチャを嘆く」ことになる。