(210)・・・毒舌相談室(15)『発達障害』・・・
「そ、そんな…。うちの子が発達障害じゃなんて…」
「すごい言い方じゃな。そんなにたまげることじゃありませんよ。誰にも、大小の特性はあるんですから」
「いや、うちはそんな家系じゃありませんから」
「あのう、そう忌み嫌わんで、落ち着いて考えましょう。生き辛さで悩んどるんじゃけん、それが、どこから来たもんか?どういう弱点を抱えとるんか?それを知ってあげれば、対応の仕方が分かりやすいでしょう?」
「うちの子は、普通じゃけん。友達も居るし、学校にもずっと行けとったし。心当たりが無いんじゃけんど…」
「大体、思春期頃に顕在化して、苦しむことが多いんですよ」
「姉も弟も普通なんですよ」
「普通てなんですか?皆、普通でしょうが…?」
「ただ、スマホにはまり込んで、ゲーム依存になっとるだけじゃと思いますがなぁ」
「なんで、そのこだわりから抜けれんのでしょう?」
「あんなもの、買い与えた私らが間違うとったんです」
「じゃあ、取り上げたら片付きますか?」
「ほれから、昆虫ばっかし飼いたがるんじゃけど、熱心でええことじゃと思とりましたがな」
「いや、ええこと、ええことじゃ。好きなことに一生懸命になって、悪いはずがないでしょう」
「ほなこと言うとらんと、うちの子は普通じゃけん、普通に扱うてくださいや」
「それはええけど、彼が何を苦しみよるんか考えてあげませんか?あんだけ、音に敏感で、人の目線ばかり気にしよったら、学校は苦しいでしょうが?」
「学校なんか、行って当たり前じゃけん。家でゲームしよる時は、笑顔で元気そうなんじゃけん、やっぱり甘えとるんじゃないですか?」
「よいよい、どうして子どもの気持ちになってあげれんのじゃろ?あんなに苦しんどるのに、親なら寄り添ってあげなさいや」
「早よ寝るように言うてください。起きれんのは、内科医が言うように起立性低血圧じゃろけん、薬を出してくださいや」
「よお、薬、薬言いますねぇ。血圧が上がったら、学校に行けますか?そんな簡単なものじゃないですよ。学校集団が好きな子も居れば、苦手な子も居る。それを、無理言いよったら、追い詰めてしまいますぞ」
「近頃、うちのがネットで見よったら、こういうんはHSPとか書いとったらしい。これなら、発達障害よりええわい言うとるんですがな」
「繊細さん…の事じゃろ?そういう部分もあるけど、聞いたことを覚えられんとか、いっぺんに二つの事をやるのが苦手とか、もっと色んなハンディを抱えとるけん。そこを認知せんといかんですよ」
「そうは思いたくないがな。そんな血筋じゃないけんな」
「誰にも、濃淡や色合いが違うけど、特性は大小あるんぞな。行き詰まった時に、その出どころを知ればええだけじゃけん」
「あ~あ、発達障害じゃのアスペルガーじゃの、言われとうない。わしは、受け付んがな」
「しょーがないなぁ。お父さんの頑固さこそ、アスペルガーじゃないですか?」
「失礼な!いくらなんでも、そんなもん失礼じゃ!」
「子どもの苦しみを理解するええ糸口なんじゃけど、もうやめときましょうかね」
「悪いが、大学病院に紹介状を書いてもらえんじゃろか?ここじゃ、検査もせんと診断されるけん、心配になって来たぞな」
「あんなボロ大学病院に行くんですか?どうせ、下手な薬が出るけん、そいだけは飲まさんと約束してくれたら、書きましょうわい」
「ええ薬があるんですか?飲んだらいかんですか?」
「子どもに得体のしれん薬をよう飲ませられますなぁ?どうなっても知らんけん」
「ふぁ~い」