(167)・・・陰謀論・・・

 インターネットの時代になって、加速化しているのが、「陰謀論」である。ある出来事や状況に対する説明だが、他に妥当な説明があるにもかかわらず、邪悪で強力な集団による陰謀が関与していると、徹底的に断定する。これを「陰謀論」と言う。

 精神科領域では、「集団ストーカー」がある。ややこしいが、宗教団体などでは、普通に行われる行為(犯罪)であるが、実際は、ネット情報による「パラノイア(妄想性障害)」のことが、圧倒的に多いのだ。「洗脳」は、病気とは違うので、「治療」にはならない。

 近年で、最も有名な陰謀論は、アメリカで起こった。「トランプは、大統領選挙に勝っているのに、陰謀で負けにされた」と、アメリカ国民の何割かが信じ込み、国会議事堂占拠事件に繋がってしまった。ベースにあるのは、「Qアノン」というインチキ集団である。

 最近の日本では、「反ワクチン運動」がある。ワクチン懐疑論には僕も賛成で、自分ではワクチンを拒否しているが、反ワクチン運動の陰謀論は、そんな生易しいレベルではない。「コロナなど存在しない」「ワクチンは生物化学兵器だ」「ドナルドトランプこそ、我々の味方」など、妄想は拡大し放題である。先日も、「Qアノン」の日本支部とやらが、家宅捜索された。奴らは、ワクチンから子どもを守る…などと言っているが、実態は金儲けである。反ワクチン運動を、SNSシステムに組み込んで、数十億円単位の金儲けをしている。また、欧州の極右政党のように、組織を広げる手段にしたり、宗教の勧誘に使う奴らも居る。

 陰謀論を利用して、国民を洗脳し、戦争に駆り立てた例は、ナチス、日本帝国、ソ連…そして、今のロシアが、「ウクライナで、ロシア人がナチスに虐殺されている」とニセ情報を垂れ流しているのも、どれもこれも、「陰謀論」である。

 さて、ウクライナ侵攻について、「欧米が作ったフェイクニュースに騙されるな」「プーチンは、追い詰められて、仕方なく立ち上がったのだ」「ウクライナは、欧米に操られて、対ロシアの代理戦争をやらされている」…など、取り上げればキリがない陰謀論が飛び交っている。

 ハシシタのように、「ゼレンスキーの過ちにより、ウクライナ国民が死んでいる。早く降伏すべきだ」などと、まぬけトンボのような評論家まで登場するに至った。降伏→虐殺→占領…以外に、何があると言うのだろう。能天気にも程があるが、ただの無知蒙昧がテレビで喋っているのだから、始末に負えない。

「トランプが大統領なら、ウクライナ侵攻は起こらなかった」という連中も、単なるバカとしか言えない。トランプとプーチンは、裏で繋がっており、小国や民族の自決権など踏みにじって、世界を分割しかねない。自由、人権、民主などの観念が無い連中が、どこの国にもはびこっていて、我が国にも、ミニプーチン、ミニトランプが居るではないか。

 僕の周囲でも、知識人タイプ、左翼系タイプこそが、陰謀論に振り回されている。ネットに首を突っ込みすぎて、「木を見て、森が見えない」らしい。ネット中毒者は、木どころか、草も苔も見えた気になり、逆に、森や林が見えなくなっている。

そういう連中は、ウクライナ侵略を、喧嘩両成敗だと、冷静そうに言う。彼らは、諸悪の根源はすべてアメリカ帝国主義であり、それさえなければ、プーチンは生まれなかった…と言う。だから、どっちも悪い、喧嘩両成敗だと言いたいらしい。

 しかし、今のウクライナは、戦争ではなく、侵略であり虐殺であり国家テロである。過去の歴史の総括は、またいずれ必要だろうが、今、この期に及んで、「どちらも悪い」などと言っているのは、戦争犯罪糾弾の世論を薄めているに過ぎない。

「洗脳こそ、手に負えりゃせんのう」

ついでに、豆知識として、暇な人は下記を見よう。

  1. スターリンの「ホロモドール
  2. 独ソ不可侵条約
  3. カチンの森事件

※余談だが、近頃はYouTuberなどという「職業」があるらしい。SNS(※)で金儲けする…そういう発想の人間を信用できるだろうか?どうせ、まともな連中ではない。令和の時代に登場した新しい裏社会である。正体を隠し、ペンネームで生きる卑怯者たちめ。僕はそういう世界から出て来たミュージシャンとか歌手とかも、全く認めない。俗世のどぶ川を流れるゴミである。
※SNS…mixi、Twitter、Facebook、LINE、Instagram、TikTok…

(出典:イラストAC