(104)・・・パラノイア・・・

 今頃の精神科医が、どんな教育を受けているのか?おおよそ察しは付くが、教科書や論文を、少しだけ調べてみたことがある。なんと、重箱の隅どころか、真ん中からつつきたくなる。教授クラスの臨床力が、落ちに落ちているのだ。書いたやつも素人だから、教えるのも素人。これじゃ、臨床現場が荒廃するはずである。

 さて、頓珍漢なのは、パラノイアについても同じである。

偏執狂へんしつきょう → 偏執病へんしゅうびょう = パラノイア → 妄想性障害。

診断名は変遷して来たのだが、それだけポイントがつかめてないのだ。

例えとして、これまで出会って来た人たちを思い出してみたい。

  1. 血統妄想;「わしは、明治天皇の直系の孫じゃけんの。今の連中に乗っ取られたんじゃが、忠臣たちが粘り強う斗っとるけん、もうすぐ迎えに来るんじゃ。ほしたら、東京に行くけんの」
  2. 好訴妄想;「ここら辺は、皆わしの土地じゃったんぞな。戦後のどさくさに紛れて、わしが居らんうちに、境界線が押されてしもた。どないしても裁判を続けて、絶対に取り戻すんじゃ」
  3. 機械妄想;「やつらは、わしが動き出したらおおごとじゃけん、首のところに機械を埋め込んどる。レントゲンとっても、写らんらしいけん、どこの外科でもお手上げじゃあ。こいつさえのけたら、わしが世の中ひっくり返すけん、皆がびくびくして、わしの様子をスパイしとる。あとをつけて来ても、わしゃ知らん顔したるんよ」
  4. 嫉妬妄想;「うちの婆さんは、わしが眠ったら、隣の爺さんのとこへ行って、セックスして帰って来る。毎晩じゃ。わしが、寝たふりをして目をつむっとったら、絶対に出て行かん。わしゃ許せんけん、婆さんを叩いちゃるんじゃが、むこの方が力が強いけん、やられっぱなしじゃ。なんとかしてぇな」
  5. 被愛妄想;「郷ひろみが、テレビで合図して来るんよ。〝もうすぐ迎えに行くけんな〟と、じっと私だけ見て、歌いよるんよ。時々、誰にも分らんようにウィンクして来らい。すぐには来れんらしいんよ。邪魔するもんが多いんで、ひろみも辛そうじゃけどな」(クレランボー症候群)

 どなたも、このこと以外は普通に暮らしていて、妄想について触れなければ、マイペースで生活している。誰かとトラブルになったり、家族とぶつかった時に、精神科に連れて来られることになる。嫉妬妄想の人は、男性高齢者が多く、アルコールが好きなケースがほとんどだった。

3の機械妄想には、「チップを埋められた」「電磁波攻撃をされている」などもあり、「集団ストーカー」など、ネット時代の落とし子も多い。最近、新居浜での3人殺傷事件でも、加害者は、「電磁波攻撃が苦しくてたまらんかった」と言っていた。

 ネットの時代になって、同じ考えの人の書き込みを見るから、修正どころか、余計に「我が意を得たり」と強気になってしまう。昔は、一人で思うだけだったから、修正のチャンスがあったが、ネットでの団結に至れば、もう手も足も出ない。

その他多くは、誇大的な妄想が混在し、どこか夢物語である。共通するのは、生真面目さ、こだわりの強さ、空想性豊か(非現実世界への没入)、過去へのとらわれ、誤認などである。

 被愛妄想は、圧倒的に女性が多く、他は、男性がほとんどだった。なぜか、嫉妬妄想以外は、単身者がほとんどで、孤独に見えるのだが、当人はそう思ってはいない。これらの妄想は、あくまでも誤認や錯覚レベルじゃなく、2~3日で変化もしないし、説得や修正にも応じないのが特徴である。

 ICD分類では、F20統合失調症の隣に、F22妄想性障害として並んでいる。教科書には、「統合失調症の人に現れることが多い」、「抗精神病薬を使う」・・などと書かれている。

あ~あ 、以上全部が間違っている。ようも、こんな嘘ばかり書けたものだ。

統合失調症の人に現れたのなら、それこそ診断が間違っていると、どうして考えないのか?バカも休み休み言え!

若い頃には、先輩に「分裂病の一つ」と教えられたが、うまく行ったことが無かった。抗精神病薬など、鎮静以外に何も効果が無い。つまり、統合失調症とは何の関係も無い。正解は、発達障害の二次障害である。自己認知を深め、客観的な修正を加えなければ、全く意味が無い。それに気が付いてから、うまく行くケースも増えて来たが…手も足も出ない頑ななケースも圧倒的に多いのだ。

このケースに限らず、精神科医は何も治すことが出来ない。薬でぼやかしているだけである。だから、精神科の卒業は、極めて少ないのだ。漢方はどうか?見事に効かないからこそ、有効である。薬に頼りきれないから、自分で「治って行く」しかない。自己修正力、自己治癒力、自立心などを阻害する薬は、もう「薬」じゃない。

(出典:イラストAC