(150)・・・毒舌相談室(5)『共感』・・・
「ここも、クジラばっかしで、ほうがいややこしい診察室じゃが、ず~とこうなんかな?」
「ほうよ、分からん奴には分からんじゃろ。こんな部屋でも喜ぶ子どもらが居るんぞな」
「うちの子も、片付けせんけん、部屋の中が無茶苦茶じゃわい。なんぼ怒っても、散らかしたままじゃ。どうにかなるまいか?」
「いやいや、片付けんのじゃなくて、どう片づけたらええんか分からんのよ。そういう特性ぞな。出来上がり図が描けんのじゃけん」
「ほうかのう。怠けとるだけじゃないんかな?ここみたいな部屋じゃけん、足の踏み場もないぞな。部屋中、トミカばっかしじゃけん」
「ほう、なかなかやるじゃないか」
「呑気な事言わんで下さいや。あれは、いつも自転車のカギを無くすわ、財布をどこかに置いて来るわ。注意力が足らんのよ」
「自慢じゃないが、わしに比べたら、まだしよいもんじゃ。なんでも怠けじゃの、病気じゃの言わんと、そういう特性を分かってあげんと…」
「腹が立つけん、どやしつけるんじゃけど治らせんがな」
「わいわい怒ってばかりじゃ、溝が深うなるだけじゃ。一緒に片付けをやって、ちいとでも教えてあげりゃええんじゃがな。物を無くさんように、工夫しておあげや」
「片付けはええわい。ほれより、スマホだけ見て、メシの最中でも、夜更かししてでも、動画ばっかし見よるけん、朝が起きれんのよ」
「世の中、スマホ中毒だらけじゃなぁ。そりゃ、取り上げても解決できんぞよ」
「うちのが、怒って取り上げたりしても、夜中に持って行きよるわい」
「それを、〝辞められない止まらない症候群〟と言うんぞな。大体は、外で遊ぶような文化が無さすぎるんよ。そういう家じゃろ?」
「わしらは、家より飲み屋でわいわいやる方が好きじゃがのう」
「お父さん、酒やめれるんかいな?パチンコやめれるんかいな?」
「何言うとるんぞな。ワシが働いた金であそぶんじゃけん、かままいがな?」
「いやいや、子どもは、親の背中見て育つんぞな。ちいと、ええとこ見せるんよ。出来んなら、出来んでええけん、共感だけでもしたらどうぞな?今頃の子どもは、学校もおもろないし、先の希望も見えんし、どう生きたらええんか分からんのよ。ストレスだらけじゃけん、スマホに逃げ込んどる。しょうがない部分もあるんじゃけん、分かってあげにゃいかんぞな」
「そんな甘い顔したらいかんじゃろ?」
「お父さん、カチカチ頭じゃなぁ。これじゃ子どもも頼って行けんわい…」
「わしらは学校にはちゃんと行ったし、もうちいと前向きじゃったぞな。今頃の子どもは、暗いし元気が無いし、どうしようもないわい」
「あのなぁ、我々の時代は、右肩上がりで運が良かっただけじゃ。今は、国が傾いて、おまけに戦争じゃの温暖化じゃの、地球が危ないのに、希望なんか持てるかいな。学校どころじゃないわい。ちいとは、子どもの気持ちになったらどうぞな」