(173)・・・佐々木新一・・・

5月12日に、75歳で亡くなったと聞いた。まるで、同じ時代を生きた友人が、居なくなったような気がする。青森の津軽出身。津軽三味線奏者の父親と、津軽民謡歌手の母親の家に生まれる。

 昭和46年にキングレコードからデビューし、47年1月の「あの娘たずねて」が、ミリオンヒット☆
ちなみに、当時の僕は、高校3年の卒業前の頃だった。

ハイトーンの高音は、三橋美智也二世と言われたが、三橋よりうまかった。今で言うなら、福田こうへいクラスだろう。

「若さの世界」
「あの娘たずねて」
「若い涙よ風に散れ」
「君は僕のともし灯」
「リンゴの花が咲いていた」
「君が好きだよ」
「早春」

全くヒットしなかったが、「早春」が僕の代表曲。琴や笛の音が前奏に流れ、しみじみとした郷愁を呼び覚ますのだ。

『早春』作詞:横井弘 作曲:桜田誠一(昭和42年1月)

城あとの 丘に登れば
ふるさとは 白い山なみ
思い出に 帽子かざして
旅へたつ 若い心に
早春の 花がかおるよ

草の芽を 口にあてれば
せせらぎに 浮かぶ面影
おてだまの 歌を教えた
矢絣の 人は嫁いで
早春の 風が渡るよ

城あとの 丘を下れば
はてしない 野火のひろがり
憧れを ひとりめざして
旅へたつ 若い心に
早春の 雲がひかるよ

城跡は、松山城(弘前城)?白い山なみは、石鎚山系(岩木山)?
この唄には、故郷を離れて上京?する、18歳の決意や望郷が流れている。
かざした帽子は、学生帽。香る花は、梅だろう。
草の芽を口にあてるのは、草笛を吹いた昔を思い出す。
もう吹けなくなった草笛…また改めて、書いてみたい。

矢絣の人…なんか、当時から居なかったけど、津軽あたりなら居たかもしれない。梶光夫の「青春の城下町」にも、矢羽根のたもとが可愛くて♪…と同じイメージが登場する。

野火は、野焼きと言って、松山の和気地方では、初春の時期に、土手や河川敷を焼いていた。発芽促進、地温上昇、土地の肥沃化、害虫退治などの意味もあったが、公害だと言われるようになり、見かけなくなった。若草山や阿蘇の山焼きは、今も有名である。

野焼きと似ているのは、焼き畑農業である。縄文時代の水稲農業以前の名残は、昭和30年前後には見られなくなった。水稲→田畑の所有→奪い合い→斗いから戦争へ→貧富の差…を考えれば、縄文時代の平和の中に、未来のヒントが隠されている。

野焼きの香りがすると、春が来た気分になった。夜になって、野火が赤々と燃える光景は、今でも鮮明に思い出すことが出来る。あの頃の大川や久万川は、今は当然ながらコンクリートに囲まれていて、蛍もトンボも、どこかに消えてしまった。老人の昔語りじゃ…むむむ。

(出典:フォトAC