(153)・・・ブラクジラ『伊予灘ものがたり』・・・

伊予灘は、双海町沖にあって、波が静かな好漁場であるが、夕日の美しさこそ、昔から語り継がれて来た。その為に、予讃線では「伊予灘ものがたり」という特別列車も走っている。

国道378号線は、「夕やけこやけライン」とも呼ばれ、伊予灘沿いに整備されているが、実は、中央構造線の断層真上にあり、その先に伊方原発があるという自己矛盾を抱えている。

 伊予市の山を抜けると、眼下に伊予灘が広がって来る。ほとんどが海ばかりの海岸線だが、上灘かみなだ下灘しもなだという二つの集落がある。

上灘には、「道の駅ふたみ」があり、「シーサイド公園」が整備されている。恋人岬やレストラン、海水浴ビーチなど何でも揃っているが、案外面白いのが、モアイ像(レプリカ)3体だろう。それぞれ、夏至、冬至、春分/秋分の日に、夕日が沈む方向を向いている。傍には、「夕やけこやけ」の石碑があって懐かしい。

♪夕焼け小焼けで日が暮れて
山のお寺の鐘がなる
おててつないでみなかえろ
からすといっしょにかえりましょ~
子供がかえったあとからは
まぁるい大きなお月さま
小鳥が夢を見るころは
空にはきらきら金の星♪

上灘と対照的なのが、下灘駅である(こっちが断然いい!)。無人駅で、何んにも無い。あるのは、駅舎の前に広がる真っ青な海☆。国道378号線が、海と駅の間に走るまでは、波打ち際に駅があったので、「日本一海に近い駅」と言われていた。

 地元の人たちが手入れをして、清潔だし、花々が満開だった。すぐ近くには、200mにもわたる菜の花畑が広がり、バス停は、「日喰ひじき」…つまり、毎日海が太陽を喰っている。

 そこに我がお目当ての『くじら』という小さな店がある。『くじら』の名物は、どういう取り合わせなのか、タコ焼きとソフトクリームとアジの開きである。

「おばちゃん。なんで、くじら言うんぞな?」

「店が小さいけん、気分だけは大きにしょう思てな、ははは」

「夕やけこやけライン」の終点は、長浜町であり、小さな寂れた街だが、有名なものが4つもある。

  1. 「長濱大橋」。国内最古の跳ね上げ式可動橋で、通称「赤橋」と呼ばれる。
  2. 「冨屋金兵衛邸」。土佐藩の坂本龍馬と吉村虎次郎が脱藩し、大阪に渡る前に泊まった所で、今も宿屋として使われている。
  3. 「青島」。長浜沖にある小島だが、たくさんの猫が住む島であり、猫好きに愛されていて、青島を知らない人でも、猫島と言えば分かるのだ。
  4. 「肱川あらし」。本当は、肱川おろし。大洲盆地から吹き降ろす濃霧が、肱川河口に立ち込める初冬の気象現象である。伍代夏子の唄でも、有名になった。

 伍代夏子は、声帯が特発性ジストニアになり、しばらく休養していた。ボトックス注射や手術をするらしいが、僕なら抑肝散加陳皮半夏を中心に、漢方で治してみせるぞな。

『肱川あらし』作詞:喜多條忠 作曲:船村徹

非の打ちどころの ない人なんていませんよ
こころに傷の ない人なんていませんよ
川を 流れる 霧あらし
町の灯りも ふたりの過去も
隠してください 肱川あらし
涙の川なら いくつも越えてきましたよ
こころが石に 変わったこともありました
大洲、長浜 赤い橋
こころがわりの 切なさだけは
こらえてください 肱川あらし

※(追記)
「くじら」と言えば、松山市内には、三津浜焼きの店がある。店が流行って流行って、注文が追い付かない。肉玉入りのそば焼きで、¥700である。
「兄さん。なんで、くじら言うんぞな?」
「店がこまいけん、大きなったらええ思てな、ははは」