(78)・・・チック症・・・

チックは、瞬発性の不随意運動であり、運動チックと音声チックがある。外来の子どもたちには、極めて多い。
運動チックは、瞬き、顔しかめ、首振り、肩すくめがあり、ビートたけしが有名である。
音声チックは、咳払いや鼻すすり、アッ、フッ、ウンなどの声が出るものがある。

心理的要因(強迫性)の単純性運動チックは、子ども時代にあっても、大人になるに従い、消えて行くものも多い。ややこしいのは、複雑性チックである。単純性チック+強迫性障害→複雑性チックだと考えたらいい。

複雑性運動チックは、体をそらす、拍手、ジャンプ、四肢の屈伸のように、より複雑な日常動作を繰り返すような症状を言う。
複雑性音声チックは、無意味な言葉、その繰り返し、汚言症(卑猥な言葉や暴言を繰り返す)、反響言語(おうむ返し)などがあり、もっともっと大変になる。
その上に難儀なのは、上の二つが合併するもので、トゥレット症候群と言う。

自分の経験では、これらは発達障害(知的障害を含む)に生じる脳機能障害だと考えている。だから、強迫性障害の部分を抑えようとして、SSRIを使うと、昂揚、興奮が起こり、痛い目に合う。どうしても、強迫に対応するなら、アナフラニールだが、薬剤過敏が無くても、なかなか飲みにくい薬である。30㎎以内しか使えない。

昔から、ハロペリドール(セレネース)が有効と言われ、僕も処方していたが、最初だけ良くても、後からダメになった。リスパダールも同じように、未だよく使われているが、ダメだろう。ドーパミンブロッカーは、ダメということになったはずだが、あちこちで使われ続けている。

複雑性は、どれも治りにくく、且つ薬剤性の副作用も起こしやすい。トゥレット症候群は、自分の臨床49年の中で、4人しか知らない。昔に診た3人は、セレネースやリスパダールを使って、行き詰った。4人目は、エビリファイで、かなり軽快した。だから、エビリファイかレキサルティが有望と思うが、最近お目にかからない。

単純性チックには、漢方83(抑肝散加陳皮半夏よくかんさんかちんぴはんげ)を使い、かなりの有効率である。効果が不十分なら、漢方12(柴胡加竜骨牡蛎湯さいこかりゅうこつぼれいとう)や26(桂枝加竜骨牡蠣湯けいしかりゅうこつぼれいとう)などを加えたりする。もちろん、複雑性でも、漢方を最初に使い、その上に何かを足すなら、少量で済む。

最近は、複雑性チックにも、一人しか出会っていない。その子は、15歳のアスペルガー少年だが、両親が、複雑性音声チックに困惑していた。これは、漢方のみで一気に完治した。漢方なら、長年飲んでも馴れが生じないし、副作用の心配が無い。

汚言症は、30歳頃に、精神病院で2人だけ出会ったことがある。当時は、漢方も知らず、ドーパミンブロッカーが良いと書かれていたので、セレネースを使って、順調だったが、後々、ややこしくなった。事情により、主治医を離れてしまい、その後を知らない。

教科書には、チック症治療には、セレネースかリスパダール。強迫性障害や発達障害を合併することが多い…などと、ボケたことが書かれている。抑肝散加陳皮半夏よくかんさんかちんぴはんげのことなど、どこにも書かれていない。あ~あ。

(出典:イラストAC

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