(186)・・・酒害・・・

 おバカなICD分類では、うつ病関連は、F32うつ病エピソード、F33反復性うつ病性障害、F34持続性気分[感情]障害、F38その他の気分[感情]障害、F39詳細不明の気分[感情]障害…となっている。これじゃ、何の説明にもならず、何の役にも立たない。

 F33やF34は、その多くが抗うつ剤やベンゾジアゼピン系が登場後に出現した。つまり、薬剤性うつ状態であって、うつ病分類に入れるべきではない。

自分流だと、①内因性うつ病(原因不明)と➁心因性うつ病、③薬剤性うつ病、④内分泌性うつ病、⑤アルコールうつ病に分ければ十分だろう。内因性うつ病は、大うつ病とも言われたが、なかなかお目にかからない。その多くは、発達障害の二次障害である。

③で有名なのは、ステロイド剤だが、降圧剤、ガスター、インターフェロン、ピル、抗ヒスタミン剤などでも起きる。自分流で言えば、抗うつ剤は、うつ病を遷延化し、ポテンシャルを下げ、情動不安定を作り、衝動性を亢進する。つまり、抗うつ剤性うつ状態の人が、この国では大量生産されている。

 繰り返し書いておきたいのは、アルコールうつ病である。アルコール問題になると、俄然目の色が変わる。僕の生涯三大憎悪(宗教、読売巨人、アルコール)の一つであり、いささか感情的になって、過去にも暴走歴多数である。

「酒は気分転換になるから、少しずつなら構いませんよ」と言う精神科医が、驚くほど多い。少しずつ…の定義は人により違うから、結構飲む人も多く、中途覚醒に悩み、朝起きれなくなる。酒飲んで酔っ払って、何が嬉しいんじゃ?

 教科書的には、うつ病↔アルコール依存と書かれていて、むしろうつ病が先にあり、それを紛らわせるためにアルコール依存になる…かのように書かれている。そういうケースも無きにしも非ずだが、そのほとんどは、アルコール依存→うつ病である。20歳前後に飲み始めたとして、40代中頃に発症して来る。治療は、抗うつ剤ではない。①断酒治療(抗酒剤)、②漢方処方、③ビタミンB剤である。

 アルコールは、肝臓内で、→アセトアルデヒド→酢酸→炭酸ガス+水に分解される。そこで働いているのが、ビタミンB1である。これがどんどん不足して行くと、精神錯乱、意識変容、眼振、失調性歩行が出現する。これを、ウェルニッケ症候群という。

 外来でも、これが診断できれば、ビタミン輸液、B1大量摂取により、瞬く間に正常化する。ところが、おバカ精神科医は、「いつものように」リスパダールやジプレキサを入れてしまい、病状を増悪させている。

 ウェルニッケが慢性化して、記銘力障害や失見当識、作話が顕著な状態になったものを、コルサコフ症候群と言う。要するに、アルコール認知症である。

 これらとは別に、アルコール幻覚症(主に幻視)があり、アルコール精神病がある。これは、病前性格や家庭環境により、症状の出方が様々になる。有名なのは、物盗られ妄想嫉妬妄想だろう。「ウチの婆さんは、夜な夜な出かけて、隣の爺さんとセックスしよる」と大騒ぎする。以前、婆さんと手錠で繋がって寝ていた爺さんもいた。やれやれ。

 酒でも飲まんとモノが言えない。酒飲むと、大きな声でわめく。酒が過ぎるから、立つもんも立たんようになる。それで、「家内が浮気しよる」などと不安になる。日本人は、遺伝的にアルコール分解酵素が少ない民族である。だから、酒など飲んでいる場合じゃないよ。

 これ以上に問題なのは、ベンゾジアゼピン系薬である。早よ言えば、酒を錠剤にしたようなもの。こいつを飲んで、会社に行くのは、酔っ払って出社するようなもの。不安は紛れるかもしれないが、決して治療にはなっていない。効いている間はいいけれど、4時間ぐらいで切れて来る。そうすれば、虚脱や不安がぶり返す。頓服は、緊急時に飲むものだが、毎日のように飲めば、もう頓服ではない。

 右を向いても左を見ても、この国は薬害、酒害に溢れているのだが、それを救うどころか、増悪に手を貸しているのが、精神科医である。自己批判を込めて、しつこく書いておきたい。

(出典:イラストAC