(81)・・・LGBTQ+・・・

最近は、LGBTが話題になることが増えた。昔と違って、性同一性障害で受診する人も、圧倒的に増えて来た。

まずは基礎知識から。
L:Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)
G:Gay(ゲイ、男性同性愛者)
B:Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)
T:Transgender(トランスジェンダー、性自認が出生時に割り当てられた性とは異なる人)
Q:Questioning(クエスチョニング、自分の性を探している人)

ややこしいが、本当は、LGBTQ+は、LGBTTTQQIAAP+の略である。こうなると、性同一性障害という範疇を外れ、性的マイノリティすべてを指している。
例えば、Iは、インターセックスのIであり、これは生物学的、肉体的な意味での、両性具有(半陰陽)であって、多くは、ホルモン治療を必要としている。
例えば、AはアセクシャルのAであり、恋愛感情を一切持たない。
例えば、Pの一つは、パンセクシャルのPであり、全ての性を愛することが出来る。

人の性には、産まれた時に判断され、戸籍に記入される性がある一方、カラダの性、こころの性、好きになる相手の性までが複雑に絡み合っている。単純な例を挙げれば、自分は男のつもりでいて(性自認)、好きになる相手は、男性(性指向)なら、ゲイということになる。

この組み合わせが、もっともっと細かく違っていて、これらを全部合わせると、全人口の10%という説もある。ずっと、「普通」だと思って来た人が、ふと自分の心の中に違和感を覚え、別の性に目覚めることも多いのだ。最近の分類では、31種類のタイプがあるらしく、そこまで行くと、何が「普通」か?など意味を持たなくなって来て、分類すること自体が差別に繋がりやすい。

これらの性の問題は、他人がとやかく言う事は出来ないが、本人の告白があれば、その時はじめて、理解してあげたい時が来る。ホモとかレズは、差別用語である。多くの人は、皆自分と無関係だと思っているだろうが、心の中に潜在している「何か」に、いつか気付くこともあるだろう。

心療内科に来るケースは、10代前半のQの人が多い。もちろん、30代になって、やっと受診する人もいる。10代の大半は、親が心配して受診する。「男の子らしい恰好をしない」「女の子と思えない言動をする」「女の子なのに、自分を僕と言う」…「病気じゃ思うけん、どうにか治せんもんじゃろか?」

性別に悩む、好きになる人が同性なので悩む、自分の思うような体じゃなくなるのが辛い…訴えは様々だ。専門外来は、岡山大精神科にあるが、ホルモン治療などは、四国ではなかなか可能な所が無い。

自分の外来では、発達障害の一つとして、LGBTQ+の悩みを抱えている人が多い。発達障害が、スペクトルであり、誰もがその線上にあるように、男女の性別自体も、性スペクトルの上にある。つまり、100%の発達障害、100%の健常者など居ないように、100%男とか、100%の女とかも、この世に存在しないのだ。普通と普通じゃない、多数派と少数派など、すべてスペクトルに置き換えれば、相互理解に繋がるのではないか?

歴史を振り返れば、多数派が少数派を差別し、支配して来た。しかし、人類の進歩や変革は、全てと言ってもいいが、少数派が居たからこそ成立して来たのだ。今の、退歩が進む人類史において、また復活の光明を見出すとしたら、それは少数派の感性に頼るしかないだろう。

(出典:イラストAC