(137)・・・仕事中毒・・・

 単に、「仕事中毒」で医療をやっているなら、自分が患者だったら、嬉しくもないし、失礼とさえ思うかもしれない。今日は、いつもの自己否定を乗り越えて、自己肯定的に考えて見たい。

仕事中毒しごとちゅうどく、ワーカホリック(Workaholic)』とは、普通に働いている状態じゃなく、私生活の多くを犠牲にして打ち込んでいる状態である。

それに対して、『ワークエンゲージメント』という概念があって、これは、仕事への思い入れがあり、仕事からまたエネルギーを得ている状態を言う。

前者は、「私は働かなければならない」(I have to work)であり、後者は、「私は働きたい」(I want to work)であるから、これなら前者のように、燃え尽きにはならない。

ユトレヒトワークエンゲージメントスケール(UWES)という世界基準の尺度があって、海外の多くの国では、平均が、3.5~4.3の間にあるが、世界で唯一日本だけが、2.6前後である。要するに、モーレツ社員、社畜などと揶揄され、滅私奉公が日本人の美徳とされて来たのだから、肯ける結果だろう。

僕も、仕事中毒を自認して来たものの、ある時、この尺度を見て、自分の状態を測ってみた。結果は意外や意外、5以上あった。

このスケールの採点方法は省くが、おおまかには下記のような設問からなっている。(0~6の点数をつける)

  1. ________ 仕事をしていると,活力がみなぎるように感じる. (活力 1) *
  2. ________ 自分の仕事に,意義や価値を大いに感じる. (熱意 1)
  3. ________ 仕事をしていると,時間がたつのが速い. (没頭 1)
  4. ________ 職場では,元気が出て精力的になるように感じる. (活力 2)*
  5. ________ 仕事に熱心である. (熱意 2)*
  6. ________ 仕事をしていると,他のことはすべて忘れてしまう. (没頭 2)
  7. ________ 仕事は,私に活力を与えてくれる. (熱意 3)*
  8. ________ 朝に目がさめると,さあ仕事へ行こう,という気持ちになる. (活力 3)*
  9. ________ 仕事に没頭しているとき,幸せだと感じる. (没頭 3)*
  10. ________ 自分の仕事に誇りを感じる. (熱意 4)*
  11. ________ 私は仕事にのめり込んでいる. (没頭 4)*
  12. ________ 長時間休まずに,働き続けることができる. (活力 4)
  13. ________ 私にとって仕事は,意欲をかきたてるものである. (熱意 5) 
  14. ________ 仕事をしていると,つい夢中になってしまう. (没頭 5)*
  15. ________ 職場では,気持ちがはつらつとしている. (活力 5)
  16. ________ 仕事から頭を切り離すのが難しい. (没頭 6)
  17. ________ ことがうまく運んでいないときでも,辛抱強く仕事をする. (活力 6)

 自分が、単なる「仕事中毒」じゃないという傍証が得られて、いささかホッとしている。39歳と62歳に、体を壊して寝込んだが、精神的には「燃え尽き症候群」にはならなかった。62歳以降、5年間寝ている間に、セカンドオピニオンをやり通し、漢方の勉強もやった。ずっと、現場に戻ることばかり考えていたのだ。

しかし、味酒には戻れない、となると、僕を雇う所が無い。一時は、高知の精神病院を考えたり、広島で探したりしたが、笠陽一郎の「悪名」は、県外にも届いていたので、行く先が見つからなかった。

結局、元味酒の山本芳成先生が、しいのきに第二診察室を設けてくれて、奇跡的に生き延びている。山本院長の気苦労は絶えないだろうが、僕としては、足を向けて寝られない。

最初は、精神病院の悪行(電気、ロボトミー、優生手術、リンチ、完全閉鎖病棟、労役etc)をただしたかった。それからは、誤診誤処方と薬害を相手にたたかった。少しは、胸を張って、誇りを持って死にたいものである。

最近は老いぼれて、さすがに状況が違って来た。「特定不明の膠原病」と言われているが、とにかく足が腫れて来て、痛むのが辛い。だから、なるべく午前中で終えるように進めている。(代わりと言っては何だが、いつも5時出勤しているので、せめて8時からは診療可能ですよ)。新患は、1日に2名までに絞っている。

本来は、新患予約を待たせるのが嫌で、最高1日10名診たこともあったが、もうボロ頭になって、何が何やら分からなくなるから、無茶は出来ない。

車の乗り降りが危うく、あんなに打ち込んだ往診も出来なくなった。しかし、信頼できる仲間が出来て、何もかも助けてくれるから、なんとか診療が続いている。

今は残念ながら、「生きとること」が最優先になった。別に命が惜しいわけではない。命が惜しいなら、あのボロワクチンにでも飛びついていただろう。

ただ1年でも長くやる為に、「とことん働く」ことは、やめようと思っている。皆さん、悪しからず、ご理解ください。

(出典:イラストAC