(47)・・・梅核気・・・
子どもの頃から、歯が丈夫で、ビール瓶のようなものは、栓抜きが要らなかった。梅干を食べると、必ず種を割って、中の天神さんを食べるのが習慣だった。
どうやら、あの種は種じゃなく、内果皮の固くなったもので、天神さん(核とか仁とか言う)こそが、本当の種だと知ったのは、大人になってから。「あれを食べたら死ぬぞな」という年寄りもいたが、若い梅の実だと、青酸があって、気分が悪くなるのは本当らしい。確かに、ウグイスが来ても、梅の実を食べるのを見たことがない。
のどが詰まる、のどに圧迫感がある、のどが息苦しい…という訴えは、心療内科によくあるものだ。ヒステリー球と言った時代もあったが、ヒステリー神経症とは限らない。要するに、のどに梅の種(この場合は、天神さん)が引っかかった感じがして、咳込んでも吐き出しても取れないし、ひどくなると、過呼吸発作に繋がったりする。ばいかくき…と読む。
医学書では、この概念が混乱して、神経性咽喉頭狭窄症(梅核気)と咽喉頭異常感症を、ごちゃ混ぜにしている。前者は、交感神経過活動から来るもので、半夏厚朴湯が著効する。ひどい場合は、半夏厚朴湯+小柴胡湯=柴朴湯が有効である。
後者は、口腔内異常感症とも言い、強迫神経症の一種で、セネストパチー(体感障害)であり、半夏厚朴湯はあまり効かない。柴胡加竜骨牡蠣湯(又は、桂枝加竜骨牡蠣湯)や半夏瀉心湯などを組み合わせるが、容易ではない。
ややこしいのは、後鼻漏(こうびろう)が苦しいという人も居て、これは、前二者とは又違うものだから、使うものも違って来る。耳鼻科泣かせの症状で、ムコソルバン、ムコダイン、チスタニンなど、粘液溶解剤をいくら出しても、効果が出にくい。ここでも、漢方が優れている。
のどの症状一つとっても、これだけややこしい。のどには、咽頭(食堂に通ず)と喉頭(気管に通ず)があって、問診から区別が必要になる。梅核気に対して、気管支拡張剤を出す医者が居たり、中には、うがい薬を処方した医者も居た。一番多いのが、ベンゾ系の抗不安剤を処方して、はい終わり…。なんぼなんでも芸が無い。こんなんで、依存性のある薬まで飲まされる人の身になってくれ~。
なお、上の記述は、どこの医学書にも、明確には書かれていない(誰れも分かってないように思う)。いつもと同じように、これまた勝手な自分流である。異論反論あれば、いつでもどうぞ。何でもええぞな、かまん、かまん。